大社高校卒35期で京都大学デザイン学ユニット教授の川上浩司氏が「ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?〜不便益という発想」という本を出版されました。本のタイトル自体、覚え難い長いタイトルのまさに不便な本です。
「不便益」という聞きなれない言葉に何が書いてあるのだろうとまず興味が湧き、ページをめくる毎に新鮮なものの捉え方に引き込まれてしまった。
東京にいたころ、駅から事務所までの約2.5kmを会社のバスが送迎していたが、私は毎日往復歩いて7〜8年通勤していた。四季の移り変わりを目の当たりにできるし、健康にもいいのだからとみんなも歩いたらと社員に勧めていた。難しいことではない、親から貰った足を交互に動かせばいいだけだからと勧めたが、賛同する人は皆無だった。多分、私を変人だと思っていたのかも知れない。しかし、この本に出合って、私が行ってきた「不便でしんどい」ことが「益」だったと実証してくれた。
「便利」を目的とするか、手段とするかによって「楽」になるか「楽しい」ものになるか。夕食をデパ地下の総菜で済ませることにより、調理時間を他の有意義な時間として使用するか、単にゴロゴロ昼寝して作るのが面倒だからと総菜を買う。これらは「便利」の功罪であろう。
「便利」と「不便」を確定的にしか見てこなかったが、「不便」を表舞台に引っぱり出すことにより、より人間的な生き方ができるような気がしてきた。このような見方で身の回りを見渡せば、自分の喜びにつながることはいくつでもありそうだ。この本は、私にそんな思いにさせてくれる。もっと早くに出合えれば良かった。
ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?〜不便益という発想〜
著者 川上浩司
1964年島根県生まれ。京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科修了。京都大学デザイン学ユニット特定教授。博士(工学)。著書に「不便から生まれるデザイン」(化学同人)
発行所 株式会社インプレス
2017年3月21日初版
定価:本体1,500円+税
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